「ハイジ」の故郷

"国境のトンネルを越えると、そこは雪国だった"
川端康成氏の小説「雪国」の書き出しの部分である。"氷河と雪の純白の世界"、"日差し眩(まばゆ)い花と緑の丘陵"、その全く異なる二つの"世界"を一つのトンネル、アイガー=トンネルが結んでいる。
暗黒の隧道(ずいどう)の向こうに新しい世界が広ける ー 期待と不安の交錯する一瞬である。


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「お父さんッ、歩きたいッ…」
「お母さんッ、歩こうッ…」
登山電車は、アイガー=トンネルを越え、クライネ=シャイデック駅に着いた。
真夏というのにやわらかい陽光。清々(すがすが)しい山の空気に誘われて、子供たちはもはやその気になっている。ハイキング=コースの入り口からは、グリンデルワルトの町並みが一望できる。素晴らしい眺めに私たちの足はすでにお花畑に…。
道の両側には、色とりどりの草花が、所狭しと咲き乱れている。放牧された牛たちの水飲み場が小川のあちこちにある。右手には、アイガー北壁の岩肌が立ちふさがっている。
アニメ「アルプスの少女」ハイジの世界そのものである。



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「私たち、休暇(ヴァカンス)でロンドンからやってきました。お宅は(ヨーロッパの)どちらからですか」
"子連れ"旅行者はめずらしいのか、「駐在員」家族と間違えられたらしい。ロンドンに駐在する日本人若夫妻がなつかしそうに声をかけてきた。
「(苦笑)いえいえ、私たち日本からやってきたんです。15時間もかけて…。ロンドンからだとスイスは近いでしょう」
「ええ、飛行機で2時間です。でも…15時間で日本に帰れるのですね………」
若い奥さんの目は少し涙に潤(うる)んでいるようだった。
"ホームシック"、それとも海外生活の気苦労…?
私たちにしてみれば羨望(せんぼう)の的。だが、実際は大変らしい。
「15時間で日本に……」奥さんの感情の微妙な変化を感じてか、先を歩いていたご主人、ふり向いていたわるような眼差し。
「お会いできて嬉しかったです。さようなら」
何度も何度も振りかえって、子供たちに手を振る二人を見送り、私たちは顔を見合わせ溜息(ためいき)をついたのだった。




「グーテン=アーベント」(こんにちは)
マックちゃんモッちゃんを見て満面に笑みを浮べたご夫婦、肢体に障害のある子供さんを抱きかかえてのハイキング。前日妻たちが頂上に登った時は、車いすでの観光客雪上散歩をしていたという。我息子、その光景を食い入るように見つめていたとか。
「おばあちゃん(75才、多発性関節リュウマチで歩行不能)も車いすで来れるかな…」
「ウン……」
心身に障害のある人の行動範囲は制約されていることは、洋の東西を問わず、言うに及ばない。
だが、駅やその他の施設・設備に身障者の利用も含めた配慮がなされている点は、日本とは少し事情が違う。
「身障者用トイレ」「身障者用エレベーター」「優先座席」などとのことわりもなかったように思う。



「あれっ、この計算書おかしい。一泊分(130フラン=1.7万円)少ない」
おばあさんにいくら説明しても「三泊」分だという。一旦部屋に引きあげ、日記をもち出し再び説明。
「宿泊地名」欄の「グリンデルワルト」の数を数え、やっと彼女は納得。
追加分(130フラン)のレシートを私に手渡し、「追加訂正の申し出なんて初めて」と。何度も何度も「ダンケ」(ありがとう)を繰返す。爽やかな心でチェックアウトできた。(続く)




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# by PochiPochi-2-s | 2016-08-04 18:05 | 「四人ぽっち」欧羅巴 ズッコケ家族の旅 | Trackback | Comments(4)

8月のカレンダーより

8月に入り今日で3日目。
今夏は不安定な天気が続き、全国のいたる所で 突然の天候の急変が見られる。
突然の予想を超えた大雨、その大雨に引き起こされた災害。
「いったいどうなっているのかしら」と思わずにはいられない。

昨日朝、ツクツクボウシの鳴き声を聞いた。
一瞬耳を疑ったが、よく聞いてみても間違いはなかった。
ツクツクボウシだった。
「まだ8月が始まったばかりよ。夏の本番はこれからですよ」
心の中で、そうつぶやいてしまった。


【8月のカレンダーから】

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Nickさんの8月のカレンダー
岩峰下のお花畑


学生時代、よく登っていた山々のお花畑を思い出す
どこまでも高く、青い空
急峻な岩場
その急な地に這うように咲く高山植物
暑い、大阪の夏
ドアが開け放たれた西向きの玄関に
一陣の涼風を送り込んでくれるように思う

♪ 夏の山行く 人の心は
高嶺の花に 咲いて語らん

思わず口をついて出たこの歌
よく歌ったものだった




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JR東日本のカレンダー
五能線を走る電車


今は30才を過ぎた次男が小学校高学年の頃、
青春18切符で
この五能線に乗りたいと
綿密な計画を立て
夏休みにお父さんと二人で
大垣夜行を使っての青春18切符電車の旅を実行した

「あいつとのこの五能線の旅が今でも一番の思い出だ」
このカレンダーを見て主人はつぶやいていた。




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絵の教室の片山先生の8月のカレンダー
ムギセンノウ


アグロステンマ 、ムギナデシコとも呼ばれ、
花の姿形、風情に惹かれ
以前庭に植えたことがあった。
いつの間にか自然と消えてしまったが、
この先生の絵を見て
もう一度植えてみようかなと思った。


さあこれからが夏本番。
このカレンダーといっしょに
暑い夏を乗り越えようと思う。



# by PochiPochi-2-s | 2016-08-03 10:44 | 日記 | Trackback | Comments(6)
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《ウバユリ》


「せっかく採ってきたんだから、誰か描かないかなぁ」
教室が始まってしばらく経った頃、先生がそう言わはった。

先週の水曜日、教室に入るとすぐに目に飛び込んできたウバユリの花
長年習っていると今までに何度か描いているのだが、
私には、色、形、花の大きさどれ一つとっても、とても描きぬくい花の一つである。

「もう一度、描いてみたい」
そう思ったが、今までに描いたことのない人も何人かいるので少し遠慮していた。
クサギの花も魅力的で、描いて見たいなぁと思っていたからだった。
しばらく待ってみたが、誰も描こうとはしない。
先生の言葉に励まされ、「じゃぁ描いてみよう」と、描くことに決めたのだった。

しかし教室でのデッサンが何となく気に入らず、
翌日下絵のデッサンをし直した。
この百合の花の形がどうにも描きぬくい。
何度も描きなおして、やっと薄く色をつけてみた。

「あれ〜っ? むぅ……」

5つつ描いた花が、左右に向いて全て横向き。
「もう一度」と、薄〜く一度塗りした横向きの花一つを丁寧に消した。

「やはりなぁ。プロとアマチュアの違いやゎ。
色をつけてみんとわからんとは…
おかげで一度塗ったものを(プロ並みに?)消すのは上手になったけど…」

消した後に、いろいろ考えてちょっと斜めの前向きの花を描いてみた。
まぁ、OKかな?

思ったとおり、スケッチブックの画用紙(F6)一枚では花の絵だけになってしまい、
結局はもう一枚足して茎の部分を描くことにした。
「まぁ、練習に描いているのだからこれでいいか」と、そう思った。

自分としてはまだ完成ではなく、八分ぐらい。
ブログに載せるため撮った写真を眺めていると、まだ手直ししたいところを
たくさん見つけたが、今日のところはひとまずこれで区切りとしたい。

朝、今日は完成させようと描き始めた時。
ツクツクホウシの鳴き声を聞いた。
「あれっ、もう夏の終わり? 」
これから夏本番と言うこの時期に…・

この夏初めての鳴き声だった。

多分、明日から次の教室まで少しづつ手直しすることだろう。



# by PochiPochi-2-s | 2016-08-02 19:57 | Trackback | Comments(8)

生きている喜びを感じられるように生活したい


by PochiPochi-2-s