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東山魁夷展 - 本当の「あお」に出会う - ・京都国立近代美術館 ・

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残照
(購入した絵葉書から)


この東山魁夷展のことを知ってからずっと行きたいと思っていた。
しかし、残暑が厳しく、あの暑い京都を考えると、気持ちは焦るが出かける気にはならなかった。
それともう一つは多分すごい混雑だろうと考えたからだった。
しかし、昨日は違った。
歩くには差し障りのないくらいの雨が降り、しかも平日で午後1時半過ぎという条件が良かったのだろうか。
不思議なくらいに会場には人は少なく、好きな絵の前で他の人に邪魔されることもなく気の済むまで鑑賞でき、
あの大好きな「あお」にゆっくりと出会うことができたのは幸運だった。

最初の「残照」は 終戦直後妻以外の家族を失い、気負うことなく素直な目と心で自然を見つめて描いた絵であり、その結果官展で初めて特選を受け、後に「国民的風景画家」と呼ばれるようになる画家の第一歩を印した記念的作品である。(パンフレットの解説より)
今回最も観たいと思っていた作品。
充分気のすむまで観ることができたのは嬉しかった。



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学生の頃から東山魁夷の絵に魅かれ、就職してすぐに買ったのが東山魁夷の画集であった。
新人教師の給料にしてはすごい高い買い物であったが、まるで宝物のようであったのを今も覚えていて、
2階の本棚にその画集を今も並べている。
またその時に買った「風景との対話」も好きでよく読んでいたものだった。
彼は絵を描きながら、その時々に深く考え悩む人でもあったように思う。

今回の美術展で嬉しいと思ったことのひとつは、手元にある文庫本「日本の本の美を求めて」「泉に聴く」
「ドイツ・オーストリア 東山魁夷小画集」の中でよく書かれている絵を心ゆくまで鑑賞することができたこと、
そして何よりも版画やリトグラフではなく
実際に描かれた絵そのものを観ることができたことだった。



《唐招提寺御影堂障壁画》
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《濤声》



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(上の写真3枚はwebsite から拝借)



唐招提寺御影堂障壁画は圧巻だった。
日本に来るのに何度も失敗し、やっと日本に来ることができた時には失明していた鑑真和上の 美しい日本の風景を見たかったであろうという気持ちを考えに考えて描いたという日本の風景、「海」と「山」が描かれている。
海を表す「濤声」と山を表す「山雲」を描くために日本中の海と山を訪ねて歩き、スケッチを繰り返したという。その結果描かれた海と山の美しい風景画である。描く人の心がこもっている。観る人の心に響くはずである。
また、鑑真和上の出身地、唐の国の風景も描かれていた。
「黄山暁雲」「揚州薫風」「桂林月宵」。
どの絵も初めて挑戦したという水墨画であり、この絵を描くためにやはり何度も中国を訪れスケッチを繰り返したという。かつて訪れたことのある中国の風景が自然と心に浮かび、懐かしささえ覚えた。特に柳の枝が風になびく景色は、その絵の前に立っているとその流れる風さえも感じられるようだった。

描く人の気持ちの込められた絵は観る人の心に響く。
本当にそう思うような障壁画で、この障壁画を独り占めするような状態で鑑賞することができたのは本当に運が良かった。
山や海の声が聞こえ、風を感じ、空気感さえも感じられた。
ただただすごいなぁと絵の前にじっと佇んでいた。



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冬華
(絵葉書から)



この絵もぜひ原画を観たいと思っていた。
白と背景の灰色だけで描かれた絵ではあるがその絵から受ける感覚はなんとも表現し難い。
ただ絵の前に立ちじっと眺めるだけだった。
白とグレーの雪景色だがなぜか暖かさが感じられた。



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「窓」



また中でも嬉しかったことは、小画集「ドイツ・オーストリア」で慣れ親しんだヨーロッパに旅行した時の絵もいくつかあり、「窓」「緑のハイデルベルク」「石の窓」などの原画が見られたことだった。



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《春の曙》



あとはこの絵が見られれば最高だが、バッキンガム宮殿の中に飾られているゆえ残念だが仕方のないことだった。
この絵に関しては以前にブログで書いているので、ここでは書かないでおこうと思う。


出かける時ほとんど雨が止んでいて傘をささずにすみ、京都でも雨が止んだすぐあとだったらしく、会場は信じられないほど絵を観る人は少なかった。並ばずにチケットを買え、絵はほぼ独占状態で気にいるまで絵の前で観ることができたのは、本当に幸運としか言いようがない。感謝の気持ちでいっぱいだった。

また。関空がまだ正常に機能していないためか、信じられないほどの観光客の少なさになぜかホッとしたのも正直な気持ちだった。
阪急河原町駅から八坂神社までの通りも、ほとんど観光客の姿がなかった。


【追加 17:20】
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「花明り」



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「行く秋」



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「映像」

(3枚とも購入した葉書から)






Commented by sternenlied3 at 2018-09-22 15:46
東山魁夷展、近くだったら、私も行きたいですね。
暑い京都を出歩きたくない。。。その感覚分かります!
夏の京都って何であんなに暑苦しく感じられるのでしょうね。
雨の時は訪れる人が少ないのですか?
こちらは逆で、雨の時の方が美術館や博物館を訪れる人が多いです。
会場は混雑せずに、ゆっくり鑑賞できてよかったですね。
唐招提寺御影堂障壁画は私も是非見てみたいです。
鑑真和上のことは井上靖の「天平の甍」が映画化された映画を
ドイツに渡ってきて間もない頃テレビで見て知りましたよ。
日本へと過酷な航海中に失明した鑑真和上の美しい日本の風景を
見たかったであろうという気持ちを考えに考えて描いたという
東山魁夷の精神には感じ入ってしまいますね。
冬華の絵は、以前拙ブログでアップした雪の衣装を纏った
ヨーロッパナラの大樹の姿を思い出してしまいますね。
Commented by pass8515 at 2018-09-22 21:48
こんばんわ。
ひっそりとした京都の街も、めずらしいですね。
いい時におでかけだったのですね。美術館のある、岡崎界隈は本当にいい所ですね。
ブログを通じて、知った東山魁夷。私も一度は実物に会ってみたいなと思いました。
「花明り」「行く秋」とてもいいですね。



Commented by o-hikidashi at 2018-09-22 23:14
東山魁夷の画集を早くから持たれていたとのこと、とても詳しく夢中で拝見しました。
知らない絵が多く、好きだけど知っているのは代表作のような・・・。
「年暮る」「花明り」などの京都の絵、北欧等を旅されての「白い馬」が好きです。
とくに北欧の町並みを描いたスケッチがとかぐらい。
香川県に東山魁夷の小さな美術館があり、そこの建物も好きなので時に出かけます。
展示作品は少ないけれど、昨年は秋野不矩と同時期の活躍とのことでとてもいい企画がありました。
今週用事があるので京都に、時間を作って行ってみたいと思います。
ありがとうございました。

Commented by jarippe at 2018-09-23 06:24
いつ頃だったかしら  徹子の部屋に出ておられ
その時の穏かなお顔の印象がずっと残っています
日本画はやはりいいですねー こうして拝見すれば
真似など到底出来ない事だと分かります
唐招提寺の襖絵にはどれだけの思いや情熱が込められていることでしょう
こちらでは長野市の信濃美術館に常設されています
Commented by PochiPochi-2-s at 2018-09-23 06:58
☆ sternenliedさん

東山魁夷の絵、大好きなんです。

暑さとここ何年かはすごい数の観光客で京都には申し訳ないのですが、
ちょっと行く気が失せてしまいますね。
美術館は岡崎(平安神宮のある場所)にあるので雨ならば歩いて出かけるのも
大変だろうと思ったのです。それとチケットを買うのに並ぶ場所も建物の外
なので傘をさして並ぶのもまた大変だろうと。予想は的中でした。
平日、午後、雨。私たちが着く直前まで降っていたようです。中で雨に濡れた
折り畳み傘を入れる小さなビニール袋を配っていましたから。

井上靖「天平の甍」は確か中学校の時国語の教科書で習ったのが初めだった
と思います。その後大人になってから再び読みましたが。
その鑑真和上の気持ちを推し量って描かれた唐招提寺御影堂障壁画には魅せら
れてしまいましたよ。

そうでしょうね。「冬華」は北欧で見た景色を描いたと書かれていましたよ♪
白とグレーの世界が冬景色なのに暖かさを感じ、私のお気に入りです。
背景を黒にするという考えもあったようですが、グレーでよかったと
説明がありましたよ。全くその通りだと思いました。
Commented by PochiPochi-2-s at 2018-09-23 07:05
☆ passさん

おはようございます。
今日はいいお天気ですね♪

関空の影響って大きいのだなぁと実感しました。
あの八坂神社までの通りが人もまばらなんて考えてもいなかったです。
時間があれば南禅寺まで歩きたかったのですが、帰りを急いでいたので
今回はパスでした。

確か10月10日過ぎぐらいまでだと思います。
時間があればぜひご覧になってください。

Commented by PochiPochi-2-s at 2018-09-23 07:09
☆ o-hikidashiさん

生誕110年記念だということでしたので、結構たくさんの絵がありましたよ♪
言いたいことはたくさんありますが、まずは観てから。
京都に行かれる用事があるのなら、ぜひ時間を作って行かれることをお勧めします。
唐招提寺御影堂障壁画には圧倒されました!
制作過程を本で読んでいたのでそのことも思い出して。
感激でした!



Commented by PochiPochi-2-s at 2018-09-23 07:33
☆ jarippeさん

テープガイドから2回流れてきた画伯自身のお声も
なんだか穏やかな感じでしたよ♪

最近日本画が好きになってきました。
やはり日本人の感性に合うのかなぁと思います。
東山魁夷という画家は、ずーっと悩み、考え、自分の道を開いてきた人
なんだなぁとおもいました。描かれたどの絵にも彼自身の思入れがあり、
その思いが観る人を魅了するのだと思いました。
唐招提寺御影堂障壁画には圧倒されました。
そうですね。今回も信濃美術館からの作品が展示されていましたよ。
いつでも見れるというのはいいですね。
私がよく行く関学のテストラン・ポプラがある同窓会館にも
一枚大きな絵が飾られています。寄贈されたとのことです。
いつでも観れるので嬉しいです。
Commented by hanamomo60 at 2018-09-23 15:41
花明かり美しいですね。

《春の曙》は母の実家に行くとお正月に祖母が出してきお皿の色合いに似ています。
これぞ日本の青ですね。
私も東山魁夷の絵は大好きでした。
寒色の使い方がすばらしい画家ですね。
Commented by PochiPochi-2-s at 2018-09-23 23:45
☆ hanamomoさん

こんばんは。
「花明かり」好きな絵です。
青みがかったグレーを背景に浮かび上がる桜。
原画はうっとりするほど美しいです。
何度も何度も間近で目を凝らしてみてしまいました(笑)
それほど人が少なかったということです。
障壁画の前ではまるで独り占めという感じでしたよ。
ラッキーでした。

青が特徴の彼の絵ですが、印刷物を見て一番がっかりするのも東山魁夷の絵です。
それほど撮影が難しい色なのでしょうね。
魅力的な色です。
画家というよりも哲学者といってもいいような画家ですね。
書かれた文章も好きです。
Commented by milletti_naoko at 2018-09-26 15:22
どの絵も自然の、その季節のその瞬間の独特の美をとらえていて、本当に美しいですね。。わたしは高校国語の現代文の教材がきっかけで、社会人になってから知ったのですが、近くにいたらぜひ足を運びたいし、画集や著作も手に取ってみたいなと思いました。特に魅かれたのは、行く秋と障壁画です。構図と色遣いの妙はもちろん、心と注ぐ瞳が伝わってくるようですね。
Commented by PochiPochi-2-s at 2018-09-26 20:24
☆ milletti_naokoさん

こんばんは。あら、今日はかしら?

東山魁夷はたくさん文章を書いています。
わたしには、”常に考える人“という印象で哲学者のようにもおもわれます。

障壁画は依頼されてから完成まで10年かかっています。
どのような絵にするか悩み、絵の構成を決めてから日本全国の海を歩きスケッチした
ということです。
鑑真和上が見たかったであろう美しい日本の風景を描きたかったようです。
エリザベス女王に献呈された「春は曙」という絵も、同じように枕草子の春は曙
を思い、ブラウニング(英)の詩を兼ね合わせ描いたということです。
日本を代表する山桜と皇室に深い縁のある吉野の山を。

描いた人の心がこもった絵は観る人の心に響きますね。
すばらしい、魅力的な画家だと思います。
Commented by kyobeauty-h at 2022-11-25 06:12
おはようございます
私もこれは見ています
確か東京で生誕100周年をやって数年後京都でも開催したと思います
この日は夫婦で行きました 普段並んでまで見たり食べたりはしませ
んがこの日は並びましたね そして初めて作品群触れて感動した事を
思い出しました 私は洋画を学びましたが日本画は全く分からなくて
当初は不思議な世界にとまどりました よく見て行く内に「一期一会」
の光景に引きずり込まれて行ったものです 写真とは全く違う表現なの
に視点を変えれば同じでとても勉強させられました 写真ってやっぱり
絵画の文化から来ている物だと確信したものです

あの頃はオーバーツーリズム真っ盛りでクタクタになって帰った来たの
も思い出しました 今京都ではあそこまではいっていませんが よく似た
状態です なのでここしばらくは近寄っていないのです 元々田舎者で
京都人などと気どってみてもなりきれないのが実態です(*^▽^*)
Commented by PochiPochi-2-s at 2022-11-26 12:00
☆ kyobeautyさん

おはようございます。
少し遅くなり申し訳ありません。

やはり見てられましたか!それも奥様とご一緒に!
そして “えッ!”と。
洋画を習ってらしたのですか!
だから撮影される写真が美しく、どこか絵画的だと思っていたのです。
今朝1番に見せていただいた「渓谷の朝」も、見た瞬間美しい!と感動しました。
紅葉が聞いていて素敵だなぁと思ったのです。
あとでコメントをと思っていたのですが記事が取り消されてしまいちょっとがっかりです。

東山魁夷の絵は記事にも書いたように若い時から大好きでした😘
障壁画に描かれた海岸の絵は曽々木海岸だと彼のエッセイの中に書かれていました。
常に風景と対話を重ね、自分の気持ちを絵に込める。
魅せられるのは当然だと思います。
長野市に東山魁夷の美術館があります。そこにゆくといつでも彼の絵が見れるかと思う
と嬉しいです。2年前上高地に行った帰りに立ち寄りました。
いちやどさんの曽々木海岸の写真を拝見したいです。
ぜひ撮影してください。(^^)

そうですね。
京都の中心地のあの混みようを見たり、経験したりすると私も同じようにちょっと敬遠し、
ここしばらく行っていません。
この時は本当にラッキーでした。
直前まで雨が降っていたようでチケットも並ばずに買えましたし、中もガラガラ。
貸切状態のようでした。珍しいことでした。
大喜びで絵の前で気にいるまで眺めていましたよ。(^^)

今朝も嵐山の人混みを解消するにはなどとTVでしていましたが難しいのかなぁと。
イタリアのボローニャのように観光客や観光バスから入都税のようなものを取ればいいのに
と思いました。ボローニャに行った時、旧市街に入る橋の手前で降ろされ、この入都税を
(観光バスが)支払い、橋を渡って歩いて入って行きました。
こんな方法なら少しはマシになるかもなんて思っていますが……。無理かなぁ。
狭いお寺の山門を大型バスがギリギリで入っていく光景を見たときにはあきれ返りました。
そして迷惑千万だと思ったものです。
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by PochiPochi-2-s | 2018-09-22 10:24 | 絵画展 | Comments(14)

生きている喜びを感じられるように生活したい


by PochiPochi-2-s