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「四人ぽっち」欧羅巴 ズッコケ家族の旅(1982年・夏)(33)

一、 花の聖母寺

" Shoulder! Shoulder! " (「肩ッ!肩ッ!」)
背広を着込みネクタイをきちんと締めた男性二人、扉の前に立っている。
"ショルダー、ショルダー"と強い口調で発せられた英単語、はっきりと聞きとれはしたものの、一体何を意味するのか解(げ)せない。
妻の肩に掲げられた"ショルダー"バッグに「注意せよ」とのことか。(イタリアは治安が悪く、盗難被害にあいやすいと聞かされていた。)




「サンタ・マリア・デル・フィオーレ」(花の聖母寺)大聖堂は13世紀終わりから15世紀中頃に建造されたゴシックの聖堂。巨大な丸屋根(クーポラ)は、高さ89m、直径13m。イタリア=ルネサンス建築最初のモニュメント(記念塔)となったという。
大聖堂前の石畳は、ヨーロッパ各国からの観光客で溢れている。服装も思い思い、真夏の太陽の下、肌を露(あら)わに軽いスタイルの老若男女が行き交う様は、日本のそれとは大いに異なる。


" Shoulder! Shoulder! "
再び扉の前の男性が叫ぶ。彼らの背広姿は、その場には不似合いなように見える。
「一体何故あんな格好をしているのか…」
訳がわからず、「ショルダー」バッグは大丈夫しっかりもっていますと、英語で言い身振りをするが、なおも二人は扉に立ちはだかっている。
ふと周りを見ると、やはり声をかけられている人がいるではないか。
呼びとめられすぐにバッグからスカーフを出し肩にかけた。と、その途端男性は道を開け観光客を通すのである。
何と、正装し扉前を固めている彼らは服装チェックをしているのである。露出度のチェックをしている。
肩丸出しルックのタンクトップ。暑いフィレンチェを快く歩き回るために着替えたのに…、と不満顔の妻。
あいにくスカーフの持ち合わせもなく、あえなく外で待ちぼうけということになってしまった。



後に気付いたことだが、そういえば広場の出店にはスカーフが山と積まれていた。
ー500リラ(100円)でー


二・ クーポラ(丸屋根)


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マックちゃんの絵


「ワタシ、お父さんと一緒に行くッ」
"女人(にょにん)の肌はご法度" 思わぬズッコケで聖堂内に入れぬ妻と、教会と美術館に食傷気味の「お兄ちゃん」を残し、私たち二人は聖堂に入った。
中は、正面入り口上の壁面ステンドグラスから差し込む採光のみが際立つ暗がりの堂である。
「クーポラ入り口」をやっと見つけ1,000リラを払い、昇りはじめる。大人一人がやっと昇れる狭い階段。観光客のお尻を見ながら進むとドーム回廊に出る。下をのぞくと聖堂が見え、人影が豆粒のようだ。
思わず足が竦(すく)むが、後ろから追われ先に進むしかない。再び階段。今度は一層勾配(こうばい)がきつくなる。いよいよ丸屋根(クーポラ)裏の階段を昇りはじめた。下を思うと不安が過(よ)ぎる。
やった!やったぞ!フィレンチェの街が一望できるクーポラの上、地上89mの高さまで、足を運んだ爽快さ…。澄みきったフィレンチェの空の青さは格別である。
建物という建物は、赤褐色の屋根、ベージュ色の壁。両者の色の調和が独特の雰囲気を醸(かも)し出している。
それはまるで、プラータの「大観覧車」最上から見たウィーンの街の風景のようだった。



下りはまるで花魁(おいらん)スタイル。"デイバック"を胸に○○kgの「お荷物」を背に急な階段を約一時間。精根尽き果てる思いだった。(続く)


* * *


この時から27年後、今から7年前、
再びフィレンチェの街を訪れ、クーポラの上に昇ることができた。
夕暮れ時ピンク色に輝くフィレンチェの街がどんなに美しかったことか!
その喜びは言葉では言い表せなかった。
ついに長年のリベンジが果たせたのであった。



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by PochiPochi-2-s | 2016-12-02 23:20 | 「四人ぽっち」欧羅巴 ズッコケ家族の旅 | Comments(0)

生きている喜びを感じられるように生活したい


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