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「四人ぽっち」欧羅巴 ズッコケ家族の旅 (1982年・夏)(27)

一、 予定外の旅程


8月3日(火)、森と音楽の街ウィーンを立つ日が来た。
ホテル"スタディオン"は、「ウィーン・ロケ」に出かけるタイの映画関係の人でロビーが混雑していた。
タイの俳優さん、子供連れの姿を見るや近づいてきて、親しげに話しかけてきた。
約二週間の予定の「ウィーン・ロケ」。シェーンブルン宮殿へ行くとか。外で待つ女優さんの呼ぶ声に、「よい旅を…」と忙しく出て行った。




「一度日本に行ってみたいです」
親切なフロント係の青年が、別れを惜しみ、玄関まで見送ってくれた。
"Aufwiedersehen!"(さようなら)
ホテルをチェック・アウトし、ひとまず Sud Bh (スード・バンホフ=ウィーン南駅へ直行した。
トランク二つを駅コインロッカーに預け、列車予約に。
さて何処(いずこ)へ………。
「イタリアに行きたい」と、妻が言い出した。
どうして、イタリアかって?
30年間小学校の教員をした義母、「退職」記念にと夫婦で欧州ツアーに。1978年春のことだった。
「イタリアがよかった…」 何度もその話を聞かされた妻としては、心の隅に無意識のうちにイタリアへの憧れが残っていたのだろう。
いや実はもう一つの理由、義母に頼まれたことも心をイタリアへと動かしたにちがいない。
左利きの財布を…と餞別を弾んでもらっている義理もあるのだろう。いやはや打算と現実的な旅程といわざるを得ない。



「"Remus"(リーマス)の予約うまく行きましたよ」と、係りの職員が予約カードを手渡してくれた。21時発の夜行列車で、首尾よく一部屋(コンパートメント)をとることができた。
さて、出発までの10時間、最後のウィーン観光へと。


二、 王宮美術館


「南駅」の通りを一つ隔てて大きな公園がある。旅程(スケジュール)に間をとり、疲れを癒すにはもってこいの場所である。
子供たち、久しぶりの水遊びに大喜び。鳩を追って走り回る二人の表情にはもはや旅の疲れは消え失せていた。



ベルヴェール宮殿は、「南駅」斜め向かい。
広大な敷地にバロック風宮殿を彼方に臨む。
大屋根の緑青(ろくしょう)が大理石壁のヴェージュ色に映える華麗な宮殿である。
真夏だというのに芝生は青々とし、ベゴニアの花が色鮮やかに咲き乱れている。
何とこんな素晴らしい宮殿が今は美術館として一般に公開されている。それもたった10シリング(約二百円弱)で…。


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もっちゃんの絵


中に入ると、溜息の出るほどの名画コレクション。美術史、世界史の教科書に掲載されている画がゆったりと見れることには驚くばかりだ。(子供にとっては、多少迷惑な話であるが。)
キリストをモチーフにした宗教画たるや、その多様さ(ヴァラエティ)に少々うんざりするほどである。それは仏教文化を背景に持たない西欧の人々が、日本の仏像、仏画の多様さに辟易(へきえき)する(であろう)気持ちに似ている。




宮殿内の喫茶室でのウィンナー・コーヒは格別の味。
カップを傾けながら、しばらくの間、「バロック」の気分に浸ったのだった。(続く)






《古いアルバムから》

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ベルヴェデール宮殿を背景に


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宮殿内部


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壁画


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天井


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「あ〜あッ、疲れた。
お母さんとお父さんの言うとおりばっかり…
絵なんておもしろないわ」



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やっと外に。
おわったおわった‼︎
ルンルンルン



Commented by pallet-sorairo at 2016-09-26 07:48
椅子に腰かけた二人に思わず「くすっ」としてしまいました。
「親に付き合うのも疲れるわぁ」
わかるわかるその気持ち、えらいえらい(^^ゞ
Commented by sternenlied at 2016-09-26 17:02
ご両親もお揃いで欧州旅行に行かれてたのですね!
イタリアは初めて行った時は一人旅の5日間の
バス周遊旅行だったのですが、とっても感激しましたよ。

ウィーンに初めて行った時に、同じホテルに宿泊していた
日本人の若い女性とホテルの食堂の朝食時に知り合いました。
彼女はクリムトのコレクションを見にウィーンにやってきたのだそうで、彼女と一緒にベルヴェデーレ宮殿のクリムトのコレクションを見に行ったのですよ。
その時にモネの初期の作品展が行われていて、とっても感激してしまいました。
美術展はあまりたくさんありすぎると子供じゃなくても疲れますね。
ウィーンには美術館がたくさんありますが、キリストをモチーフにした宗教画には私も満腹状態でしたね(笑)

Commented by PochiPochi-2-s at 2016-09-26 23:34
☆ pallet-sorairoさん

そうでしょう?
今さらながら可哀想なことをしたなぁ〜と。
親の勝手の思いだけで行きたくもない旅行に連れて行かれ引っ張り回され、
子供達はきっとおもしろくなかったでしょうね。
今の私ならきっと言いますよ。
「なんて親だ!自分勝手な!」と。(笑)
Commented by PochiPochi-2-s at 2016-09-26 23:51
☆ sternenliedさん

母や父の世代の人たちはみんなが一番いい青春時代が戦争の時代
だったので、外国に対する憧れが強かったのだと思います。
退職時、互助組合主催の欧州への団体旅行の企画を知り、
参加したと聞きました。
帰ってきてからどれだけ聞かされたことか!

イタリアはいいですね。
この後ズッコケ家族はフィレンツェに。
この時はイタリアはフィレンツェだけでしたが、後から再びミラノ、
ヴェネチア、フィレンツェ、ピサ、ナポリ、ローマ、ヴァチカン、
サンジミアーノ等回りましたよ。イタリアは大好きです。
機会があれば、次はもっと小さな町に行ってみたいなぁと思います。

sternenliedさんも何度かウィーンに行かれたのでしたよね。
本当にベルヴェデールの絵画のコレクションはすごいですものね。
何年か前に再びウィーンに行ったのですが、
このズッコケの時の のんびりゆったりしていたウィーンの印象が強く、
あまりにも観光客が多くなっていたのには驚きました。

確かに、子供にはつまらなかったと思います。
Commented by pallet-sorairo at 2016-09-27 09:14
おはようございます。
いえいえ、
子どもにとって美術館はちょっとだけ退屈でくたびれるところのはずですが
いつも楽しそうだし、
詰まらなかったらこんな素敵なスケッチは描けませんでしょう。
お子さんたちすごくいい経験をなさったなぁと羨ましく思っています。
Commented by PochiPochi-2-s at 2016-09-27 23:10
☆ pallet-sorairoさん

そう思うのは大人ばかりかもです。
まあ無意識のうちに何かと影響を与えたのかもしれませんね。
二人とも大学生になった時にお金を貯めて、もう一度主にイタリア、
スイスを旅して回っていましたね。
兄の方は、同じ建築家の友人とイタリアを1ヶ月うろつき回り、
妹の方はやはり大学の友人と二人でイタリアとスイスを1ヶ月、
旅して回ってました。どちらもバックパッカースタイルで。
なんとなく覚えているところもあったなんて言ってましたよ。
その程度で大人が思うほど……です💦
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by PochiPochi-2-s | 2016-09-25 23:18 | 「四人ぽっち」欧羅巴 ズッコケ家族の旅 | Comments(6)

生きている喜びを感じられるように生活したい


by PochiPochi-2-s