「ねぇ、溝蓋が壊れてしまったんやけど… 作り直してもらえる?」
「うん、いいよ。ちょっと待ってくれたら、作り直すから」
「急がなくてもいいよ。何かで代用しておくから」
主人は DIYが大好きだ。
今までかなりたくさんのモノを作ってきた。
その中の一つに 2階ファミリールームの壁面いっぱいの大きな本棚がある。
彼の作品の中の最大の作品だ。
2階ファミリールームの本棚
*
最近おもしろい記事を見つけた。
シンプル・ていねい
Do It Yourself
DIY
自分の手で、自分の暮らしをつくりだす DIY。
便利なものがあふれる今、なぜ? その魅力は?
*
4人の対談という形で記事は書かれていた。
ヨーロッパではリノベーションで手をかければ価値は上がるけれど、経済優先の時代は、日本では手をかけるだけ無駄みたいな感じで、かつては当たり前だった手を入れて住むという習慣が、失われてしまったように思われた。しかし、今やエネルギー政策も人の意識も変わって、日本もやっと変わり始めている。これまで「新しいものがいい」できたけれど、愛着をもって、ていねいに住み継いでいくことが素敵だというふうになってきた。そんななかで、Do It Yuorself が広がっている。
記事のなかで、デンマーク人のイェンス・イェンセンさんが言っている。
「モノを買うのは、お金があれば誰でもできる。だけど自分で作るのは、自分しかできない。思い通りにいくかは別として、オリジナルの表現ができる。それが豊かさだと、ぼくは思います」
「……疲れたときは、工房に入って何かを作るとリフレッシュできます。
何より作るプロセスが楽しい。……」
ドイツの友人、ルースとご主人のルーディガーの家を思い出した。
2002年6月半ば、
初めて一人でヨーロッパへ旅行し、ハンブルグ郊外にある彼らの家を訪ねた。
「私たちはもう年をとって再び大好きな日本にまで旅行に行けないが、その遠い
日本からはるばる訪ねてきてくれてとっても嬉しい。遠慮しないで、この家で
ゆっくり過ごしてください。私たちと一緒にいる時は、決してあなたのお金を
使わないように。高い飛行機代を払ってまできてくれたのだから。一人で行動
する時のためにとっておきなさい」と言って大歓迎してくれたのだった。
彼らの家のなかは見事に手作りのものばかりだった。
ルーディガーは 大学の教授で太陽エネルギーの研究者だったが、
家では DIY が大好きだった。
彼らの家のなかの家具、スタンド、本棚、テーブル、椅子、キッチンセット、
テラスのテーブルに至るまですべて彼の手作りだった。
その上、家を建てて以来40年の間、毎年家のどこかを自分で修理したり、
手直ししたりしていた。愛着の塊のような家だった。
近くに住む息子の家もまた自分で作りあげた家であった。
庭がかなり広いという理由で 築100年の古い家を買い、内装すべてを自分一人で
コツコツと修理していた。私が招かれた時、ちょうど床のフローリングが完成した
時だった。その見事な美しさに圧倒されたのを今でも鮮明に覚えている。
また家族で所有するヨットの修理や手入れも全部自分たちですると言っていた。
親子二代、揃ってDIY を信条としていた。
重厚な、伝統のある家具で揃えられたドイツ人の家を想像していた私の思いは
見事に覆された瞬間だった。
戦争で激しい空襲に遭い、すべてのものを焼かれてしまった結果、たどり着いた
考えだったという。
『お金を出せば欲しい家具は手に入るが、自分たちの手で作った家具の方が愛着
がある。そこに豊かさがある』
ここまではいかなくとも、
自分で何かを作り出し、楽しむというのはすばらしいことだと思う。
イェンス・イェンセンさんが言われるように、
『心のゆとり』『豊かさ』なのかもしれない。
最後に、DIY は何も工作だけに限らない。
料理、洋裁、手芸、ガーデニング等すべてのものにいえること。
さぁ、私も頑張ってみよう。