「ハイ! グレンです。今、駅に着いたよ。待ってます」
夕方 4時少し前、私の携帯が鳴った。
迎えに行くために家を出ようとしていた時だった。
「うん? 何処にいるの?」
ああ、いたいた。
「ハイ、グレン! 久しぶり。元気だった?」
「やぁ、めっちゃ久しぶり。元気元気。
紹介します。ガールフレンドのシェリーです。つき合っています」
二人はニュージーランドからやってきた。
南島・クライストチャーチ出身のグレンが、今 北島のオークランドに住んでいる。
只々 彼女と一緒にいたいがために。
目のパッチリとした、かわいい、ハキハキと物を言う、明るい女性だった。
食事までの間、グレンが大好きだった思い出の梅酒を飲みながら 話は弾んだ。何年経とうと、彼は 相変わらずのゆっくりペースで はにかみながら話す。一方、シェリーは 次から次へはっきりと話す。回転が速い。
彼らはコミュニケーションが上手。私と主人にいろいろと質問をする。それも答えやすいような質問を。「このゴールデンウイークはどのようにすごした?」「最後に英語を使ったのはいつ?」「完全に退職したのはいつ? 今、どうしてるの?」「子どもは何人いて 其々何処に住んでるの? 彼らはどのような仕事をしてるの?」「孫は何人いるの? 何才なの? 男の子?女の子? どんなことをして遊んでるの?」 等々
このような話題が引き金になり、次から次へと話が展開する。気がつくと食べるのも忘れてかなり喋っていた。
主人の趣味の木工作品の話。今までに作った作品・本箱やテレビ台、ウッドデッキのパーゴラ、ウッドデッキの上の日除けの屋根などを二人に見せながら説明していた。2Fの壁一面に作られた本棚にはかなりびっくりしていた。
主人作・本棚
シェリーと私は 気が合い、しかも、話もよくあった。私の2年前の夏の『イギリス一人旅』の話に、彼女は興味津々だった。2年間ロンドンで働いていたので、イギリスの話はおもしろかったようだった。カーディフ、バース、トーキー、湖水地方、ハワースへのブリットレイルパス利用の列車の旅。シニア料金(通常料金の約2/3・一等車使用)があり、一等車では食事、飲み物サービスが料金の中に含まれていること、コーヒーはスターバックスだったこと、度々出されるクッキーやサンドイッチが美味しかったこと。また アガサクリスティのミステリー、登場人物の一人の エルキュールポアロやブロンテ姉妹の『嵐が丘』『ジェーンエアー』、『高慢と偏見』のジェーンオースティン、ワーズワースやブラウニングの詩、ゴールズワージーの『林檎の木』等 お互い好きな本もよく似ていた。
「○○コ、シェリーは料理するのが大好きだから、このローストビーフ、チーズケーキそれにグレープフルーツとオレンジのゼリーの作り方を教えてあげてほしい」
突然、グレンが言った。
「シェリー、料理するの、好きなの?」「ええ、大好き」「じゃぁ、レシピあげる。英語に直して、メールで送るわ。ニュージーランドに帰るまででいい?」「レシピをいただけるのは何より嬉しいわ。ありがとうございます。帰ってからグレンのために頑張って料理します。ローストビーフとチーズケーキの話を いつも彼から聞いています」「それで、ますます僕の体重が増えるというわけ…」
別に何も特別な食事は準備しなかった。彼らがいま好きなもの、かつて好きで大喜びをしたものだけを用意しておいた。
主人の作る握り寿司 (マグロ、鯛-山椒の葉と一緒に-、サーモン - 生姜のすりおろし+ 万能ネギの小口切り)、私の焼いたローストビーフ、ポテトサラダ、グレープフルーツ(赤・白)とオレンジのゼリー、チーズケーキ、自家製2年ものの梅酒、ビール + 楽しいおしゃべり
ロストビーフ(写真を撮り忘れ、以前の写真で代用)
“もう一度食べたい”と待ち望んでくれていたローストビーフ。
そうだろうと思ってたくさん作っておいた。ニコッと笑い、お腹いっぱい食べていた。「これこれ、この味。懐かしいなぁ〜」
こんなに喜んでくれるとは!これほど嬉しく、幸せなことはない。
十分満足したようだった。
お土産にチーズケーキ1/2と小さなペットボトルに梅酒を入れ 喜んで持って帰った。
久しぶりの再会でおしゃべりと食べることに夢中になり、写真を撮るのを忘れてしまったのが残念だった。最後に大慌てで 4人で撮った写真は帰国後送ってくれるとのこと。“ほっと” 一安心。
次回は、スキーをするために日本に来たいという。
再会を約束して、最寄の駅まで送っていった。
ちなみに、今回のシェリーの飛行機のチケットは、グレンから彼女への誕生日プレゼントだったらしい。彼の、彼女への並々ならぬ気持ちがよくわかった。グレン、ごちそうさま!
明日、広島、安芸の宮島へ。その後、京都で3泊、東京で1泊。相撲を見てから帰国するという。残りの旅行、気をつけてね。
また会う日まで。
《今日の花》
ジャスミン
レモンの花