人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『心に残る人びと』ー その1 ー

最近、時間があると読む本のなかに、『心に残る人びと』(文藝春秋編)がある。
私のなかの、『心に残る人びと』を書いてみたいと思う。

🍁

「晩秋の季節となり朝夕めっきり冷えるこの頃です。先日は…
夏には山小屋での慰霊祭に参加させていただき感無量でございました。…」

今朝、他の件で 必要な書類を探しているときに、
この手紙が、 はらりと 私の手元に舞い落ちた。
開けてみると、大学時代 所属していたクラブの同期生のお母さんからの、同期のみ
んなへの手紙、長野県にあるクラブの山小屋での慰霊祭への招待に対するお礼の手紙
だった。10年以上も前のものだった。

心は、すぐに、学生時代に戻った

同期の友の名前はT君。
入学後、初めて行われた錬成合宿中に、もう一人の同期の友・Y君と2人が
熱射病で亡くなった。思いもよらぬ不幸な事故だった。
「あまりにも悪条件が重なりすぎた」と、いまだに思う。

🍁

入学当時、大学は、大学紛争のため封鎖中だった。
しかし、確か7月初め頃、新入生だけで 学校の近くでキャンプをすることになった。

夕方から 三々五々集まり、テントを張り、夕食を作る。
目的は、新入生だけの“親睦会”という名の “ 飲み会 + だべりんぐ”
上級生からの差し入れもあり、食べ物、アルコール類を含む飲み物は十分だった。

夕食後、キャンプファイヤーを囲み、話は尽きなかった。

私を含め、生まれて初めて経験する人が多かった。
親元から離れ、自由を享受し、青春を謳歌していた。
ほどんど全員、一睡もせず、夜明けまで 熱く語り合った。
満天の星の夜空。いまだに鮮明に思い出す。

「僕は、ここに入るまでに2浪もしたんや。両親は文句も言わず、僕を支え、
励まし、一生懸命 応援してくれた。親にめっちゃ苦労かけてるので、思いっきり
勉強して、一日も早く恩返しをしたいんや」

彼の言葉が、印象的だった。深く 私の胸の奥まで 響いた。

翌日 帰り道、下宿まで送ってくれる時、彼は 再び 言った。
「もうすぐ祇園祭やなぁ。この祭り、大好きやねん。みんなで一緒に見に行こうや」

この後すぐに、彼は亡くなった。

彼の故郷で行われたお葬式の時の御両親の姿を、終世 忘れることはないだろう。
「逆縁」
御両親の慟哭する姿が、いまだに脳裏に焼きついている。
御両親の無念さ、侘しさ、哀しみを思う時、
「T君・Y君の分まで一生懸命生きよう」と心に誓った。

飾られし遺詠は久に会いたるを喜ぶ如くほほえみて見ゆ
賛美歌を合唱する中しめやかに白菊つぎつぎ供えられゆく
幾人か同期の友の尋ねくるる心根嬉しく涙こぼるる

手紙に書かれていた、T君のお母様の読まれた歌の一部分。
息子の死から33年経ち、やっと心にけじめをつけることができたと書かれていた。

今 思えば、彼とは、時間にして、ほんの1〜2日分ぐらいしか話していない。
しかし、彼の姿、夜を徹して話した彼の言葉、彼の人生への真摯な態度、考え方等は
当時の私に強烈な印象を与え、いまだに、私の心の中でしっかり生きている。

ほんの一瞬だったが、強烈な光を放った人だった。

あれから40年以上経つが、まだ、祇園祭に行く気にはならない。


《庭の晩秋の風知草》
『心に残る人びと』ー その1 ー_b0344816_12043856.jpg
いつか絵に描いてみたい。


名前
URL
削除用パスワード
by PochiPochi-2-s | 2014-11-08 16:22 | 思い出 | Comments(0)

生きている喜びを感じられるように生活したい


by PochiPochi-2-s