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チョコレート

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ブログ友Dekoさんに頂いたスノードロップが咲いた


昨日のことだった。

「なあ、なんとかの真珠ってどこのことだった? 何の真珠だった?」
2階から主人の声がした。
出かけるのをやめ、 CDを聴きながらマムシグサのスケッチをしていた時だった。
木、金、土と3連続で外出が続くと、水曜日に絵の教室から持ち帰った草花が枯れてしまう。
湿らせた新聞紙に包み、ナイロン袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存してはいるが、そう長く持つはずはない。早くスケッチだけでもしておかなくてはと、急遽遠出をやめ、マムシグサのスケッチと格闘していた時だった。

「うん?何?どうしたの?
“ドナウの真珠”のこと? ハンガリーのブダペストのことだと思うけど」
「チェコのモルダウはドナウと違うんやったかな。モルダウはどこへ流れていくのかな」
「チェコからドイツに入りエルベ川と合流し、ドレスデンからハンブルクへ流れる。
最後は北海へ流れこむと思うわ。それがどうしたん?」
「いやちょっと知りたいことがあって」

ハンブルグと口に出して言ったとたんに、私の心にメミングさんの顔が浮かんだ。
「どうしてはるかな。夏から手紙も届いていないし。
今年もまたカナリア諸島に避寒にいってるのだろうか」
あの懐かしい笑顔、話し方、声を思い出し、心はメミングさんのところへ飛んでいった。

「〇〇ーコ、チョコレートはどのようなのが好き?
ナッツが入っているのがいい?それともチョコレートだけのものがいい?
ブラック? セミスウィート? それともスウィート?」
初めて彼女をハンブルグ郊外の家に訪ねた時のことだった。
しばらく話しをした後で、何の脈絡もなく突然聞かれたのだった。
小さな丸テーブルの上にはコーヒーとチョコレート菓子が置かれていたが。
「私、何も入っていないスウィートが好きです」
確かそう答えたが、会話の流れの中のひとコマ、いつの間にか忘れてしまっていた。

この会話から4、5日後、初めてひとりでリューベックに行くことになった。
出かける準備をしていた私に、私が好きだと言ったチョコレートを手渡して彼女は言った。
「〇〇ーコ、はい、あなたの好きなチョコレート。これを持っていきなさい。
レストランでの一人だけの食事は、楽しくもないしおいしくもない。
そのうえ、値段も高いしテーブルチャージやその他のお金もかかる。
不経済だと思うので、お腹が空いたらこのチョコレートを食べて過ごしなさい。
夕食を十分に用意して待っているから。
私たちは昼食と夕食をひっくり返してもいいから。
朝と昼に同じものを食べて待っているから。気にしなくていいのよ。
それよりか私たちも大好きなリューベックの街を心おきなく楽しんできなさい。
レストランでの食事時間はもったいないわ」
また、「水も、ペットボトルを持っているのなら、それに水道水を入れていけばいい。
水道水は飲めるから。もしガス入りの水が好きならばそれも家にあるから」とも言ってくれた。

この時初めてドイツ人(いやこんなことをするのはメミングさん夫婦だけかもしれないが)というものを知ったのだった。
心に深く残る瞬間だった。とても印象的だった。
「なるほどなぁ。でも私は客人にこんなアドヴァイスをできるだろうか。
夕食はたっぷり用意しているから、お昼はチョコレートを食べて空腹を満たすようにという」
そう思ったことも確かだった。

チョコレートを食べて空腹を満たし、街の中を歩き回り、かつてハンザの女王と呼ばれた雰囲気のあるこの街を十分心から楽しめた。
お礼にと買ったリューベックのお土産のマジパン。
彼女は大喜びで夕食を減らしてでも毎晩ひとつづつ食べると言い張った。
クリスマスの時にのみ買ったりプレゼントしたりするお菓子だという。
リューベックの名産品らしかった。
おいしいチョコレートを見たり食べたりすると必ず思い出す彼女の言葉とチョコレートの味。

あの初めてのヨーロッパへの一人旅からもう15年も経った。
メミングさんも夫のルーディガーも二人とも85歳を過ぎた。
「まだまだ元気でいてほしいなぁ。今年のクリスマスカードには何を書こうか。
プレゼントは何を送ろうか。彼女たちの好きないつもの生チョコもいっしょに送ろう。きっとにっこり笑って毎晩ひとつづつ食べることだろう。」

そんなことを思いながらマムシグサのスケッチと格闘していた。




Commented by sternenlied2 at 2017-11-13 22:57
ドイツ人って節約家が多いです。
町巡りしていても、店で飲み物を注文すると、高いですから、
ペットボトルを持参する人は多いですね。
でもメミングさんの世代は特に戦争時の物が不足してた時代を
体験してるので、余計に節約を怠らないのでしょうね^^
お昼、リューベックを巡るのに、チョコレートだけでもちましたか(笑)
町を巡ってたら、お腹が大層空いてくるだろうと思いますけど。
そのマジパンを売ってる本店みたいなところ、カフェにもなってましたが、
そこのケーキがとても美味しかったのを覚えています。
リューベックで印象に残ったレストランは古い煉瓦造りの船主クラブの家ですね。
天井から精巧に造られた古い帆船の模型がいくつも吊るされていて、
昔ながらの古い木造のどっしりとした長いテーブルが並んでいて、
ハンザ時代の趣が楽しめますし、 料理もとてもおいしかったですよ。
Commented by PochiPochi-2-s at 2017-11-15 07:51
☆ sternenliedさん

おはようございます♪

やっぱり。
そうですね。彼女たちは戦争が終わった時は14才と15才で、
連日の空爆でハンブルグは見るのも無残に破壊されていたと
メミングさんは言ってましたね。食料不足で栄養失調になり、
しばらくスイスで静養しなければならなかったとも言ってました。

シニア2人の朝食時間は遅くしかもゆっくりとたっぷり食べたので
チョコレートだけでもお昼はお腹が空きませんでしたよ。
ただホテル泊だともっといろんなところに行っていただろうなあとも。
いまだにそう思っていますが、これほどドイツが好きにならなかった
かもとも思っています。やはり人とのコミュニケーションがある旅行
はいつまでも心に残るものだろうなあとも思っていますよ。
一番印象的だったのは、「遠い日本から高い航空運賃を払いわざわざ
訪ねてきてくれたのだから、私たちと一緒の時はあなたのお金は
使わないように。使いたければひとりで行動する時に使いなさい」
と言ってくれた彼女の言葉でしたよ。
何度かはいったレストランでの食事の時も、塩漬け鰊を食べに行った時や
ボートツアーの時も全然私は支払いませんでしたよ。
見事なホスピタリティでした!

マジパンは、多分、言ってられるお店で買ったのだと思います。
あまりにもたくさんの人が出入りし何かを買っていたので、興味を
そそられ入ってみたのです。なんとまぁ!とビックリしましたよ。
お土産に買って帰り、手渡した時の彼女の嬉しそうな笑顔は今でも
鮮やかに目に浮かびます。
もう一度行きたいとは思いますが、そに時にはお薦めのレストランで
食事をしたいですね。

Commented by Deko at 2017-11-18 10:36 x
ドイツ人のお宅に逗留されて心温かいおもてなしを受けられたのですね。
そういうふうに気軽に旅人を受け入れられる風土なのでしょうか
若い頃の知り合いがドイツに駐在中に知り合った女性と結婚しましたが
若い頃はすごくきれいだったのですが歳を重ねていくうちに。。。。。
でした。其方の花は栄養が行き届いて丸丸していますね。我が家は地植えなので栄養が足りないようで華奢です。
Commented by PochiPochi-2-s at 2017-11-19 09:24
☆ Dekoさん

おはようございます♪
いや、そんなにきがるには泊めないでしょう。
彼女とは知り合ってからそれまで10年以上の期間があり、
お互いのことがよくわかっていたからだと思います。
もう1人のアンジーの場合も同じです。

ふっと気がつくと咲いていました。
可愛くて。
あまり肥料はやっていませんが、姿に似合わず強い花ですね。
ありがとうございます♪

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by PochiPochi-2-s | 2017-11-13 14:30 | 思い出 | Comments(4)

生きている喜びを感じられるように生活したい


by PochiPochi-2-s