海の色

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芦屋沖から見る大阪湾の海
遠くにかすかに友ヶ島、淡路島が見える


「あらっ、今日はプールの水がきれいだわ。9月に入り水を入れ替えたのかな」
プールに入ろうとした時に、水のきれいさにふっとそう思った。
クロール、背泳と泳いでいる間に、先日読み、このブログに書いた東山魁夷『日本の美を求めて』の中の「自然と色彩」の章を再び思い出していた。

この前は日本の風景の色彩についての部分を引用したのだったが、
今日思い出したのは、それに続くの日本の海の色彩について書いている部分だった。
「私はここで日本の海の色彩についても語らなければならない」
この文で始まっている。

東山魁夷は少年期を神戸で送っており、須磨の海岸で泳いだり淡路島で夏を過ごしたという。
その時の海の様子を次のように描いている。

夜明けの空が水平線の近くで茜色に染まり、万物の生命の象徴としての太陽が、若々しく生まれ出る荘厳な一瞬。磯近くは澄んだ緑色に、遠く沖のほうは青く塗り別けられた海面を、しろい縞模様を幾段にも描いて波頭が打ち寄せてくる真昼。空も海も透明な薄紫に沈んで、宵の明星が刻々と輝きを増す砂浜の静寂。暗黒の沖に点々と漁火が並び、渚に砕ける波が燐光を放つ夜 ー それらは今でも生き生きとした情熱となって私の中に残っている。

私は、海のそばで生まれ、育った。
小さい頃の遊び場は、いつも砂浜の波打ち際だった。
海に沈む夕日が好きで、夕方になるとよく見に行ったものだった。
東山魁夷の描く海の風景は、そっくりそのまま私の中の海の風景と重なるように思う。

彼は美術学校を卒業して間も無くの頃、ヨーロッパに旅し、2年間の留学生活を送っている。
船で約2ヶ月をかけて行き、再び2ヶ月をかけて帰国したという。
東支那海、南支那海、インド洋、紅海を経て地中海へ。 更にマルセイユで船を乗り換え地中海からビスケー湾、英仏海峡、北海を経てエルベ川を遡ってハンブルグへ。
帰りはナポリから乗船し、再び同じコースを辿って帰国した。

「海の色は天候や時間に大きく左右されるのは言う迄も無いが、それでも、その国なり地方固有の色調があると思わないではいられない」
この章の中でそのように言っている彼が日本の海の色について特に感じたのは、
留学を終えて帰国した時であったという。
殊に、船が瀬戸内海へ入ってきた時、「これが日本の海の色だ」と思ったと書かれていた。
日本画の色彩に、古来、最もよく使われている群青緑青という絵の具の色、
群青に緑青を混ぜることによって得られる微妙な色感の色だと思ったという。

小さい時から慣れ親しんでいる海や、今まで行ったいろんな海を思い出した。
太平洋側の海、日本海側の海、北海道や九州の海、またドーバーをフェリーで渡った時の海の色やバルト海の海の色、ハワイの海の色、サンフランシスコの海の色、カーディフやトーキーで見た海の色、スペインで見た地中海の海の色、ナポリ周辺の海の色など。

言われてみればそうだなぁ。
瀬戸内海の海の色が日本の海の色かもしれないと、私もまた思ったのだった。
(東山魁夷も私も関西育ちだからかもしれないが)

静かな、穏やかな海の色。
何かあると必ず見に行きたいと思う海の色。
じっと眺めていると心が安らぎ、いつの間にか気持ちが平静になっている海の色。
いつも心に浮かぶ海の色。
この色が群青と緑青を混ぜた色なのか。

さあもうひと泳ぎ。
「水泳が楽しくなってきた」とこの私が思うなんて信じられるだろうか?
3年前全く泳ぐことができず、水泳教室で苦労していたことが信じられない。
なんでもやってみるものだなぁと、嬉しくなったのだった。




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Commented by sternenlied2 at 2017-09-11 14:05
東山魁夷が少年だった頃の須磨の海はさぞ美しかったでしょうね。
神戸に住んでいた私にとって浜といえば須磨しか知らなかったのですが、
私が住んでた頃は公害のピークで、もうねずみ色に汚れきっていた海でした。
それでも母に連れられて須磨の水族館に行く時は後で浜に出て、海だ!と
ウキウキと楽しかったものです。今では須磨の海は綺麗になってるのかしら。

そう、海は土地によっていろんな個性がありますよね。
私は訪れた海の中では力強い大西洋が一番気に入ってますけど。
Commented by PochiPochi-2-s at 2017-09-12 09:44
☆ sternenliedさん

おはようございます♪

今朝5時過ぎ、突然の雷鳴、大雨。飛び起きました。
今も降っています。
今年のお天気はどうなっているのだろう?

今はきれいですよ。
以前は海岸の近くに駐車できる空き地があったのですが、
今はどことも高い駐車料金を取るようになって…
どうせ走るならもっと先の方へと舞子近くまで走らせます。
恋人岬なる場所ができていて、ここから明石大橋を真近に
見ることができ、駐車場も無料なので、海を見ながらゆっくりと
時間を過ごし散歩することができます。
瀬戸内の海は穏やかで、まさに東山魁夷が言っている海の色ですね。

sternenliedさんは太西洋が一番のお気に入りですか?
私はイギリス南西部のドーバーに面したトーキーやナポリの海が
明るくて、キラキラしていていいなあと思いましたが、
じっと眺め時間を過ごすにはやはり故郷の海が好きですね。
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by PochiPochi-2-s | 2017-09-10 23:07 | 読書 | Trackback | Comments(2)

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