気分を変えて - 東山魁夷 『山嶺湧雲』-

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昨日のウッドデッキの雨


昨日は久しぶりの雨。ほぼ一日中降っていた。
時には激しく、時には弱く。
しかし、今日は朝から気持ちよく晴れた。
8時過ぎ、気温は21度。
心もち涼しいなぁと感じるくらいだった。

「やっと涼しくなってきたから、気分を変えて西宮までドライブしようか?
ポプラの日替わりランチが《サーモンのポアレ トマトのオーブン焼きパルサミコソース》や」

確か去年も一昨年もこの夏が終わり秋が始まるこの頃に行ったなぁと思いながらも、気を遣って言ってくれてるのだろうと素直にランチに行くことに同意した。
他にも理由があったからだった。
レストラン・ポプラの入っている同窓会館のロビーに飾られている東山魁夷の『山嶺湧雲』(リトグラフ)を久しぶりにじっくりと鑑賞したかったからだった。


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「山嶺湧雲」 (リトグラフ) / 東山 魁夷
(ウェブサイトから拝借)


この画は1998年同窓会館の完成を記念して夫人の東山すみさんより寄贈された。
この会館に来ると、必ずこの絵の前に立ち、しばらくの間じっとみつめてしまう。
山の嶺々の間から湧き出る雲、その様子、雰囲気、色使い。
それら全てにひきこまれてしまう。
まるで自分がこの絵の中に溶け込み、そこにいるかのような気分になる。
そのたなびく雲や、流れる空気、時にはその空気に含まれる湿り気さえも肌に感じる。
魅了されてしまうのである。
何故なのだろうか?
いつも心の中で思ってしまう。

2、3日前から東山魁夷『日本の美を求めて』を読んでいる。
「自然と色彩」という章の中で、彼は日本の風景の色彩について次のように言っている。
(「峠の道を、いま私は登っていく」という文章の後に様々な峠の心象風景を文章にして描いている。)

これはどこの峠というわけではなく、風景の色彩について語ろうと思った時、私の心に浮かんできた情景であり、どこにでもある峠の風景である。日本列島は程良い緯度に位置し、南北に長い地形を、背骨のように山脈が縦走している。湿潤な気候を持ち、樹木の種類も多く、よく繁茂している。このような条件から、日本の風景は極めて多彩な面と、同時に統一されて見える両面を持つと考えられる。
亜熱帯的な景観から亜寒帯的性格を持つ風土に及んでいて、四季の推移が鮮やかである。また、高い山が多く、山頂には雪、中腹は紅葉、麓はまだ緑という情景によく出合うことがある。
しかし、湿潤な気候は霧や霞を伴い易く、大陸性の乾燥した空気の中で見る鮮明さとは違い、抑制された柔らかみのある独特な色感が生まれるのである。
多彩と淡白、華麗と幽玄という対蹠的な性格を併有し、きめこまやかで味わい深いという点で、世界にも比類の無い風景といえる。美術史を見ても、大和絵の優雅と、水墨画の枯淡があり、等伯、宗達、光琳のように、一人の画家で色彩画と墨絵との両面に、優れた作品を残した例も少なくない。これらの画家が最も日本的な巨匠と言われるのは、あるいは日本の風景の色彩の特質を、高度に生かし得た点にあるとも考えられる。

この文を読んで 、なぜ『山嶺湧雲』の絵に魅了されるのか、その理由がほんの少しだけわかったように思った。
彼の、日本の風景への憧れとほめたたえる気持ち、日本の美を探求する心からくる日本の風景への深い洞察が絵に反映されているのだろう。

ランチのあと、この絵の前に立ち、気のすむまでじっと鑑賞することができたのは、幸せなことだった。

またこの絵を見たくなったらいつでもここに来れると思うと、
嬉しくて心が弾むのであった。



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サーモンのポアレ




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Commented by mimi-74 at 2017-09-09 12:43
こんばんは。
もう随分前にお亡くなりになった米国人の日本文学者に「日本の気候風土が、日本人の民族性を培ったのではないでしょうか?」と言いましたら「そうです」との返事でした。このブログを拝見していて、何故か思い出したのですよ。
Commented by jarippe at 2017-09-09 12:58
東山魁の絵に包み込まれていたいですね
彼が感じ取っていた日本の四季や風景はもしかしたら
今現在とはちょっと違うかもしれないですね
気のせいでしょうか 当時の方が四季がはっきりしていて
植物の変化も感じやすかったんじゃないかって・・・・・
そんな事を思ってしまいます
自分の感性の鈍さを自然のせいにしている私ですね
Commented by PochiPochi-2-s at 2017-09-10 06:58
☆ mimiさん

おはようございます♪
国民性はそこに住む気候風土に大いに影響を受ける。
そうだと思います。
海外に住んでられるmimiさんの目には日本の気候風土、
や国民性はどのように映るのかしら?

彼は、常に画家とは?、風景とは?、風景画とは?
等考えながらいつも描いている画家ですね。
私は、その点が好きなのかもしれないです。

mimiさんの写真、いつも楽しみにして見させてもらっています。
これからもよろしくお願いしますね。








Commented by PochiPochi-2-s at 2017-09-10 07:24
☆ jarippeさん

おはようございます♪
東山魁夷の絵、大好きです。
多分彼の絵に対する追求、美に対する追求が反映している
のでしょうね。以前、唐招提寺の障壁画に海を描くために、
日本中の海岸を周りスケッチをしたという文を読み、
その障壁画を見たいなぁと思いました。
昨日TVで唐招提寺の特集を見ましたが、今度行って見たいと
思っています。自動車でなら家からそれほど遠くはないので。

自然の変化。そうかもしれないと思います。
この引用した部分の前に、四季折々の峠の風景が言葉で
表現されています。特にどこの峠というわけではなく、
心に思い浮かぶ四季それぞれの峠の景色だと書かれていました。
感性が素晴らしいのだろうなあと。
そう思いました。
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by PochiPochi-2-s | 2017-09-08 23:38 | 思い | Trackback | Comments(4)

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by PochiPochi-2-s