9歳で〜すッ!
にいにい、じゃませんといて。僕1人でロウソクを消したいからッ!
サッカーゴールの飾りの誕生日ケーキを前にロウソクを吹き消すアサヒちゃん(小3)
ケーキはおばあちゃんが焼いたガトーショコラゴールの飾りはお母さんが作った。
昨日はアサヒちゃんの誕生日の食事会だった。
7月29日生まれ。いつもはこの前後の土日にしていたのだが、
去年2人がサッカークラブに入ってからは土日が急に忙しくなってしまった。
特に兄のハルちゃんが この春中学生になった途端にクラブ活動(サッカー部)で忙しくなり、
土日の予定は全く立たなくなってしまったという。
誕生日の食事会は延び延びになり、昨日夕方、やっとみんなのスケジュールの隙間をぬって
全員集合となったのだった。
この日もアサヒちゃんは午前中は水泳、午後からはサッカーの練習だった。
「夕方5時ジャストにマンションの駐車場がとれたから」
前日長男からメールを貰っていた。
5時過ぎ到着、しばらくしてから始める予定だった。
しかし、クラブ活動で試合に行っていたハルちゃんが6時を過ぎても帰ってこず、
仕方なくハルちゃん抜きで始めることにした。
お母さんの作った唐揚げ、トマトとアボガドのサラダ、トウモロコシの冷製スープ、
お父さんの作ったペペロンチーノ、主人の焼いた祝い鯛、焼き鯖寿司、
私の焼いた誕生日ケーキ2種類。
食卓は華やか。会話は楽しかったがやはり何か物足りない。
いつもいる"ニイニイ"がいないということに何となく寂しさを感じるのか、
いつものアサヒのちょっとふざけた賑やかさがなく、
嬉しそうにはしていたがやけにおとなしかったのがおかしかった。
「どうしているのだろう?」「 何かあったのかな?」
ハルを待ちながらも心配だった。
「おそらく試合に負けたか、だるい試合をしたとかで怒られているんやろうなぁ。
多分走らされているで」
長男もケロッとして言ってはいたが、やはり少し心配なようだった。
7時過ぎやっと兄のハルちゃんが帰ってきた。
シャワーを浴び、着替えて早速 食卓に。
その食べること! その量! アサヒちゃんの嬉しそうな顔!
「そうやねん。試合に負け、お前らだるいッて怒られ、試合の後そこの運動場で
200mのシャトルを10回もさせられてたんや。2kmは走ったと思うで」
ハルちゃんは食べながらケロッとして言っていた。
お父さんの予感が当たったようだった。
「お父さんもなぁ、中3の時、毎日クラブ(サッカー)の練習の後、そのくらい走ってたわ。
みんな走るのが嫌の子は用事があるとか塾があるとか言ってサボっていたけど、
塾にも行ってなかったし、何にも用事もなかったから毎日真面目に走っていた。
でも 今から考えると、そのことが後々よかったと思うで。
今はきつくてしんどいだろうけど、この夏を越せばたぶん楽になると思うから頑張れや」
「そうなん? 走るのはちょっとしんどかったけど、夏が終わればなんとかなると思っている。頑張るわ」
食事をしながらの親子の会話に少しホッとしたのだった。
誕生日ケーキにろうそくが灯され、みんな、特に大好きなにいにいがいる前で火を吹き消す時
にはいつものアサヒちゃんに戻っていた。
チーズケーキはみんなが大好きで、これからしばらくの間のおやつに欲しかったらしい。
小さく切り分け冷凍し、毎日ひと切れづつ食べるという。
特にハルちゃんが好きなので、「にいにいのための僕からおばあちゃんへの特別注文だ」
と言っていた。
いい誕生会だったなぁ。
※ 中1になったハルちゃんの中学生活をほんの少しだけ心配していたのだったが、
彼の明るさ、話し方にいつものハルちゃんを感じることができ、
「これならなんとかやっていけるだろう」と、ほっとひと安心したのだった。
主人も、
「久しぶりにハルちゃんの顔を見れて安心した。あの様子なら大丈夫だろう」とひと言。
最近は何かと問題になる中学生活。
主人も言葉にしてまで言わないが、心の中では心配していたのだろう。
ほっとした顔が心に残った。
祝い鯛
ハルちゃん(中1)
♧
夕方いつのものように自主トレという名の水泳に行った。
帰ろうと最後にジャクジーに浸かっていると、足をつったらしい女性がはいってきた。
「足がつったときは温めるといいですよ」
その私の言葉に、彼女は嬉しそうに話し始めた。
「私はねえ、もう81歳なんよ。家族みんなに『泳ぐのやめとけ。何か事故でもあったら皆さんに迷惑がかかるから』って とめられてるんやけど、泳ぐに好きなんやからやめられへんのよ。今日も兄弟で来てるんよ。今はもうあんまり泳がれへん、25mがやっとやけど。でも楽しいわ!」
その話し方から感じる若さと明るさに圧倒された。
その表情、様子に美しいなぁと思った。
これから先もっと年を取ってもこのような女性になりたいなぁ。
そう思ってシャワーを浴びていた。