去年の桜 (2015/3/22)
「今日 東京で さくらの開花宣言がされた」と夜のTVニュースで報道されていた。
私の住む大阪の開花予想日は 24日だという。
あと3日もすれば、今年もあの美しいさくらの花が見れるのかと思うと、
なんとなく、こころ楽しくなった。
桜といえば、今で、も鮮明に思い出すシーンがある。
「そんな歌を二度とわしの前で歌ってくれぬな」
常日頃は優しくて、ニコニコと笑っていた父だったが、
その時ばかりは声を荒げて、私に向かってきっぱりと言ったのだった。
その時、私は大学のクラブの夏合宿の帰りに実家に立ち寄り、
合宿の時の何か高揚した気分の延長で、鼻歌で「同期の桜」の替え歌を歌っていた。
この頃、合宿の最期のキャンプファイヤーなどで、仲間意識を高めるためかこの替え
歌がよく歌われていた。男子も女子もなかった。みんなで円陣を組んでよく歌った。
父は、戦争については、一言も私たち子供には語らなかった。
時々、母を通して聞くのみであった。
だからなのだろうか、
当時は 私もまだまだ若く、父がどのような気持ちで戦場で戦っていたのか、
たびたび遭遇した戦友の死に対してどんな思いで耐えていたのかなど、
全く考えもしていなかった。
まして、謂わゆる、「同期の桜」や「海ゆかば」のような軍歌がどんなに父の気持ちを傷つけるものであったのかということなど考えも及ばなかったのだった。
しかし、その父の言葉は強く私のこころに残った。
二度と歌うことはなかった。
父の前でも、クラブででも。
しかし、以前にも書いたように父は桜の花が大好きで、
父との思い出にはいつも桜の花が出てくる。
今年も父や母、そしてやはり桜の花が大好きだった義母を思いだしながら、
桜の花を追いかけることだろう。
去年描いた桜・オオカンザクラ2015/3/26